ワインを「見せる」ための完璧な環境制御

ワインセラーの設計において、最も重要なのは「完璧な環境制御」です。ワインは非常にデリケートであり、温度や湿度のわずかな変化が品質に影響を及ぼします。私たちの手掛けるコンクリート住宅は、躯体自体が高い気密性と断熱性を持っているため、一度安定した環境を構築すれば、それを維持しやすいという大きなメリットがあります。その上で、ワインセラー専用の高性能空調システムを導入し、年間を通して理想的な温度（12〜16℃）と湿度（60〜75%）を保つように設計します。振動対策も徹底し、基礎から独立させたり、防振材を挟み込んだりすることもあります。
しかし、単に保管するだけではもったいない。ワインセラー自体を「アート作品」のように見せることを意識しています。例えば、ガラス張りのセラーにして、リビングやダイニングからコレクションが眺められるようにしたり、紫外線カット機能付きのLED照明で、ワインのラベルが美しく映えるような演出を施します。ボトル一本一本が輝くような、そんな空間を目指しています。

「おもてなしの舞台」としての家庭用バー

家庭用バーもまた、お客様のライフスタイルを象徴する空間です。機能性はもちろんのこと、私が重視するのは「おもてなしの舞台」としてのデザインです。LDKとシームレスにつながるプライベートバーカウンターを組み込むことで、お客様自身がホストとしてスマートに振る舞え、ゲストも心からリラックスできるような空間を創造します。
素材選びには特にこだわり、「本物の上質さ」を追求します。大理石や天然木、真鍮などの金属を惜しみなく使い、それぞれの素材が持つ質感や表情を最大限に引き出します。重厚感がありながらも洗練された雰囲気が漂うよう、素材の組み合わせには細心の注意を払います。照明も、ただ明るいだけでなく、光と影のコントラストで空間に奥行きを与え、ムードを創り出すことを重視します。間接照明を多用することで、空間全体が柔らかく、そしてドラマティックに見えるように工夫します。

「感情を揺さぶる空間」の創造

お客様には、自宅でありながらも「非日常の体験」を味わってほしいと考えています。日々の喧騒から離れ、お気に入りのワインをゆっくりと味わうプライベートな時間。あるいは、大切なゲストを招き、最高のおもてなしをする社交の場。お客様がそこで過ごす「瞬間」一つ一つが、人生の中で特別な思い出として残るような、「感情を揺さぶる空間」を創り出すこと。これが、私が目指すところです。
希少なコレクションをお持ちのお客様には、より厳重なセキュリティ対策を施したセラーをご提案します。顔認証システムや指紋認証はもちろんのこと、コレクションルームへの動線を限定したり、入口を巧妙に隠したりと、「アートコレクションがあること自体を悟られないような、さりげないセキュリティ」を意識しています。万が一の災害時にもコレクションを守れるよう、耐震性や防水性にも配慮した設計を心がけています。

コンクリート住宅がもたらす「こだわり」の具現化

コンクリートの無機質な質感とニュートラルな色合いは、ワインボトルやグラスの色彩、そしてバーカウンターの素材感を際立たせる最高の背景となります。重厚感のあるコンクリートの壁は、空間に落ち着きと安定感をもたらし、そこで過ごす時間をより豊かに感じさせるでしょう。まさに、お客様の「こだわり」を具現化するための、最高の「器」だと考えます。
過去の事例では、リビングの一角に一見すると普通の壁に見える隠し扉を設け、その奥にまるでヨーロッパの古城にあるような石積みの地下ワインセラーを創り上げたことがあります。地下の安定した温度環境とコンクリートの躯体を組み合わせることで、理想的な保管環境を実現しました。「隠す」という秘密性が、ワインの価値をさらに高め、お客様の所有欲を刺激します。

また、アートコレクターのお客様のために、コンクリート打ち放しの壁を基調としたギャラリーバーを設計したこともあります。一枚板のウォールナット材のカウンターと、バックライトで美しく浮かび上がるガラス棚にディスプレイされたボトルコレクションは、まさにアート作品のよう。夜には、空間全体の明るさを抑え、ボトル一本一本がオブジェのように浮かび上がる演出で、「自宅に居ながらにして、世界のどこかにある隠れ家バーに来たような感覚になる」とお客様に喜んでいただきました。

お客様の「こだわり」や「ライフスタイル」を表現する大切な要素としてのワインセラーや家庭用バーは、単なる設備ではありません。完璧な環境制御と、空間をアート作品のように見せる演出の融合は、私たちの「かっこいいものが好き」という哲学が色濃く反映されています。お客様の感性を刺激し、特別な記憶を刻むための舞台をデザインすること。それが私たちの使命です。